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【 B L U E M I N T 】

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別れが来る事は初めから分かっていた―

どんなに想っても、願いは叶わない事はとうの昔に知っている。
否、そもそも『願う』ことそのものが無意味・・・幻想、夢だ。


どんなに足掻いても、何かが奪う、何かが壊す
その中で置いていかれるのはいつも自分。


だから一度だけ・・・このくだらない世界を、この叶わぬ夢を呪うように、

一度だけ、俺が誰かを置いていってやろうと思った・・・。



そう、アイツが良い。俺を狂わせたあの男が・・・。



【 ネガイ 】



「もう俺に貴様は必要ない」
「・・・!」


いつもの様に呼び出し、会った途端・・・俺の発した言葉に奴は絶句した。
見物だ。いつもへらへらと笑うこの男からは想像も出来ないほどの表情。


胸が・・・ざわつく。


「必要ないって・・・いきなりどういう事だ?ヴァルガーヴ」
「知れたことだ。光の剣はすでに俺の手中にある。つまり、貴様とこうして会う理由ももはやない・・・という事だ」
「・・・」


そう、こうして会っていたのはそれが目的だった。

リナ=インバースやゼロスと共にいられては少々厄介。この男の剣の腕も相当のものだが、所詮俺の敵ではない。一人ならどうという程のこともない。
おまけに呼び出せばすぐに現れる、まったく途方もない馬鹿だ。



 ―・・・ホントウノバカハ、ダレダ?―



「二度と貴様に会う事もない」
「随分勝手な言い分だな」

そう、勝手な言い分だ。だが良いだろう?
何もかも奪われ、壊されてきた身だ・・・一度くらい壊してみたって良いだろう?

これは呪いだ。

俺を狂わせた貴様が・・・俺に関わらぬようにする為の。



「・・・目的は・・・果たしたとでも言うのか?」
「そうだ、俺の目的は光の剣だけだ!それを手に入れた今、貴様の存在はもはや俺には何の意味もない!
用無しは・・・消えろ!」
「・・・」


コイツは、俺を狂わせた。

『光の剣を持っている人間』・・・最初はその程度だった。
それが、今では名前どころかこの身体に存在を刻んでいる。

唯一信じていたガーヴ様はもういない、もはやこんな世界に未練も何もなかった、そのはずだった。


『ガウリイ=ガブリエフ』・・・この男に出会うまでは、自分の世界は動いてすらいなかったのに・・・




「・・・」



少しだけ、ほんの少しだけ・・・
この世界のモノに執着してしまった俺がいた。


あってはならない事だ。

数百年に渡って、魔族を神を・・・生きとし生けるものを全てを見限った俺はもう引き返せないところまで来ている。


今更何が・・・。



「・・・・・・」
「・・・・・・」


ガウ、リイ・・・?


ひたすら黙っているガウリイ・・・。

最低だ。酷い言葉を並べて奴を傷付けたというのに、俺は奴に嫌われることを恐れている。

何処までも最低だ。



「・・・ヴァルガーヴ」


・・・最悪だ。


「どうしてオレの目を見ない?」
「・・・!!」


いつの間にか逸らしていた視線を戻せば、いつもの様にまっすぐに見つめてくれる、奴の瞳があった。


「・・・」

まさか・・・

全て受け止めたとでもいうのか。

俺の最後の手段を、こうもあっさりと・・・受け止めてしまったというのか。



「・・・・・・」



どうすれば良いかわからない。こんな返答は予想外だ。

俺は・・・俺は、


「ヴァルガーヴ」
「・・・」


俺はどんな顔をしている?どんな瞳で奴に応えている?

奴が・・・俺に近づいて来ているのに・・・ダメだ、動けない。


「ヴァルガーヴ」


呼ぶな、来るな・・・!!

泣き叫ぶことができたらどんなに楽だろうか。
必死に溢れそうになる涙を・・・漏れそうになる嗚咽に堪えた。


程なく切なく諦めさえ帯びた奴の瞳に、ふっと覗き込まれた。




「言ってくれ、ヴァル・・・」



俺の身体を抱きしめ、呟く。

俺は動けない、この手を振り解く術を、俺は持っていない。


堰をきったように溢れ出した涙が頬を伝う。

「・・・出来ん・・・」
「・・・ヴァル・・・」
「出来ん・・・!」


出来ない。


何も言えない、もう二度と言う事など出来ない。
この包まれる温かい腕を振り解くことも・・・何も。

「お前さんは・・・これから世界を全部ぶっ壊しに行くのか?
もうこうして会えないのか?」
「・・・あぁ」
「その時俺はどうなる?残された俺はどうすれば良いんだ?」
「馬鹿か。
俺は世界を消すんだ、そのうち貴様もどうせ消える」
「・・・俺は死んだりしない」
「・・・何?」


見上げればいつもの優しい微笑みが落ちてきた。

俺の心をっぱいにする、その笑みが。


「お前が生きていて・・・また会えるなら、俺は死んだりしない」
「・・・嘘だ」
「嘘じゃない」
「嘘だ!」
「嘘じゃない」
「嘘だ、嘘をつくなっ!!!」

「・・・・・・・・・お前が好きだ、愛してるんだ・・・ヴァルガーヴ」

「っ!?」



待ち望んでいた言葉・・・。


このまま・・・コイツに身を委ねれば、俺は・・・




「ヴァルガーヴ・・・」
「ガウ、リイ・・・」


身体を少し離し、

 ― ネガイガ、カナウノカ? ―


唇が…重な・・・




 ― イナ ―

 ― ネガイハ…カナワヌモノ ―



何かが、はじけた。






 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう、何もかも遅いのだ」




バサッ!!

天に広げた翼が開ききる頃・・・俺はすでに上空にいた。

「!?!ヴァルッ・・・!ヴァルガーヴッ!!!」


下から、何度も何度も・・・吼えるように俺の名を呼ぶ奴の声が聞こえる。

あんな声を聞くのも、これが最初で最後かもな・・・。



肩を押さえている・・・あぁ、俺が翼を広げた拍子に傷つけたのか・・・。





 ・・・これで良い。



名の付けられない互いの関係と己の感情。

アイツはいつも笑顔で俺を放さなかった。
どんなに怒りをぶつけても、どんなに危険な目に遭わせたとしても。
最後にはいつも全て、受け入れてくれた・・・。


・・・・・・だからこそ、



 ― オイテイクコトモ、オイテイカレルコトモ、ゴメンダ ―




俺はコイツの想いには応えることなど出来はしない。

「・・・ガウリイ・・・」


お前は俺に優しくしてくれた・・・
なのに俺は・・こんな方法でしかお前を想えない。


 ― コレイジョウ、カカワラナイ ―


単純にして、明確。明確であるが故の愚考。
臆病な俺は、最後にこんな形でしか…お前を想う方法が思いつかない。


「・・・」


一度だけ振り返り、下を見つめた。

地面でなお叫び続ける男・・・俺の心を、最後まで揺さぶり続けた男・・・。


これが、最後だ。

何一つ叶わないこの世界で、この俺の中に残った最後の願い、最後の夢。


 ― モシモ… ―




 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・愛している」




 ― モウイチド、デアエタラ… ―




それは自分すら聞こえないほど小さく、風に消えた。



 ― ソノトキコソ、…イッショニ… ―






・・・・・さらばだ。







【 END 】



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